さよならを…

作者：あお

ねぇ、今日は帰らなくていいの？

こんな時間まで一緒にいて…奥さんに怒られちゃうわよ？

ふふ、だってさっきから時計ばかり気にしてる。

別にいいのに私との記念日なんて

お祝いするようなものじゃないんだから…忘れてくれても。

え？プレゼント？ ふふ、これは受け取れない。

私にとってはこんなのただの首輪じゃない？ 先のない関係に縛られたくないの。

あなたのものになるつもりなんてないわ。

あ…ふふ、あなたって欲張りね そうやって優しく抱きしめて、甘い言葉を囁いて

あっという間に罠に落としてしまう。

ずるい人…

…あ、ほら、電話。奥さんからでしょ。謝らないで、最初から期待してないから。

早く帰ってあげて…またね

はぁー...何やってんだろ私。あの人の前で聞き分けのいい女ぶって…

またあとで泣くくせに

もっと一緒にいたい、行かないでって、泣いてすがって、

プレゼントだって素直に嬉しいって受け取ればいいのに…なんでできないかなぁー

 …私のことだけ見てて、私にだけ優しくして、独り占めしたいよ なんて、

いつから言えなくなったのかな

本当はワガママで、甘えん坊で、寂しがり屋で…

あなたには見せたことのない顔ばかりだったのにな いつまで続けるの？

こんな関係に進む道はないのに…

わかってて｢さよなら」を言い出せないのは、あなたが好きだから

それとも私の弱さ…なのかな