しき「冬」

作:かにみそ大将軍
女「ねぇ。似合ってる?」
男「あぁ綺麗だよ」
女「ふふ。ありがとう。じゃあ写真撮ろう」
男 純白を纏ったその姿は言葉にならないくらい綺麗だった。
女「ねぇ。ありがとうね」
男「言っただろ。お前のやりたいこと全部やろうって」
女「うん。だから…ありがとう」
男「どういたしまして(笑)」
男 最近、辛そうにしている彼女をよく見る。
大丈夫?と聞くと
女 「何でもない。大丈夫だから」
男 と、笑顔で返してくるのだ。俺には、それがとても辛かった。
こんなに傍にいるのに、何もできない無力な自分が嫌になる…
女 自分の事だからよくわかる。私はもう永くない。
きっと…私に春は来ない。
だから…
女「ねぇ、最後のお願い聞いてもらえるかな」
男「わかった。何をしたらいい?」
女「あのね、君にはずっと笑っていてほしいの」
男「ずっと?できるかな(笑)」
女「ずっとだよ(笑)。約束したからね」
男「わかったよ(笑)」
男 いつもの並木道を君と歩く
女 枯れた木々に白が咲いていく
女「(咳き込む)」
男「大丈夫か⁉」
女「大丈夫…大丈夫だから…」
男「大丈夫じゃないだろ‼救急車‼」
女「ねぇ…約束覚えてる?」
男「約束⁉今それどころじゃ」
女「別れが泣き顔なんて嫌だよ…最後だから」
男「最後だなんて言うなよ!」
女「…ずっと笑っていて…」
男「無茶言うなよ…」
女「お願い…」
男「…これで…笑えているか?」
女「うん…ありがとう…大好きだよ…」
男「俺も‼大好きだ‼だから‼」
男 溶けた雪が二人の頬を流れていった。
冷たくなっていく彼女を…
俺は…
ただ抱きしめることしか出来なかった…
END