ちいさなたびだち

作者:とっこ


ある日、ある女の子が、友達に言いました。

「お話作ってあげるね!」

これは、ある少女が作った、ほのぼの物語。

私はうさぎ。昔は草がいっぱいあったこの場所も、灰色の固いもので固められた。

誰にも聞こえないため息をつく。仲間もいない。みんな、怪しい人達に連れてかれたんだ。

それか、どこかで……。私は一人で生きてきた。これからも、ずっと、そうなんだろうな。

私は、一人で生きていく。そういう運命なんだ。

苦笑いなんて、何度したことか。……正直、寂しい。


僕はハムスター!

僕を狭い部屋からこんな広いところに連れ出してきてくれたご主人に感謝してる!

元気いっぱいな僕が本当の僕なんだ!

でもね…ちょっと最近は落ち込んでて。だって、ご主人がいないんだ。家に。

いつもは朝に出ていったら夜には帰ってくるのに。一日中いないんだ。

それだけじゃない。毎日ご主人の周りにいた人たちはみんな泣いてる。

あとは、叫んだりしてる。

笑って?って言っても、泣き続けてたり、余計に叫び出したり…

(嫌だなあ)

そう思った僕は、無意識に外へ飛び出していた。

あそこに帰りたくなくて、大きなものの間をくぐったり、避けたりしながら走る。

どこまで行ったらいいかな?なんて思いながら、地面を蹴る。

そこで、私は出会った。元気な彼に。

そこで、僕は出会った。ひとりぼっちの彼女に。

「…あんた、どこから来たの?」

「あ!ねえねえ!ここ、どこなの?僕、どこに行けばいい?お腹減ってるの!」

「…はあ、こっちの話聞けないの?あんた、随分と耳小さいんだね」

「そっちこそ!耳どんだけ大きいんだよ!重くないの?」

「別に。生まれてから付いてるし。慣れたし」

そんな他愛もない話をしていたうさぎとハムスターでしたが、彼らの横をおおきなバスが通った時、ハムスターがあっと声を上げました。

「ねえ、競走しようよ!どっちがあのバスより速く走れるか!」

「それはもう試した。無理だよ」

「えぇ〜?やってみないとわかんないじゃん!」

と、言いつつ、ハムスターは走る準備をしています。

うさぎも、ゆっくりとした動作で、走る体勢になりました。

「行くよー!よーい……」

そういったまま、ハムスターは固まってしまいました。どうしたのか、とうさぎが問いました。

「ねえ、あそこにいるでかいやつ、なに?」

「ん?ああ、あれは馬だよ」

「ウマ?」

「そう、あいつ、足がめちゃくちゃ速いんだよ」

「ふーん」

興味無さそうに呟いたあと、ハムスターは再び号令をかけました。

ハムスターはうさぎにあっさり追い抜かれました。

うさぎはバスを目掛けて一直線に走っていましたが、バスにも、馬にも、追いつくことは出来ず、

赤色に変わった信号の前で止まり、ハムスターが追いついてくるのを待ちました。

「はぁ……はぁ……凄い速いね……!僕、びっくりした!」

「そっちこそ、案外気力あるじゃん」

「ねえねえ!ウマさんも一緒に僕たちとどこかに行こうよ!」

ハムスターの言葉は聞こえなかったのか、馬は走って人間の所へ戻っていきました。

「ちぇ、なんだよあいつ。せっかく誘ってやったのに」

「しょうがないさ。馬は人間に忠実だからな」

「チュウジツ?」

「まあ…にんげんが大好きってことさ」

「へえ」

「あんた、人間が嫌いなのか?」

「うーん、苦手、かな。うさぎさんは?」

「大っ嫌いだよ」

「じゃあ、僕と一緒にどこか行こうよ!」

「何言ってるんだ」

「人間のいないどこかへ行くの!」

「っ!……はあ、全く…あんた、さては馬鹿だな?」

「ば、バカって何さ!」

「いや、なんでもない。行くか」

そういうと、うさぎはスタスタと歩きだしました。

「そうそう行くの!……え!?行ってくれるの!?ねえ!返事してよー!」

「うるさい、置いてくよ」

彼らが大声で話していても、誰も、何も、その小さな、可愛らしい会話に気づくことはありませんでした。

風が運んできた噂では、彼らは今も、旅を続けているようですよ。

〜おしまい〜

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