一瞬を永遠に

作:かにみそ大将軍


男「撮るよー」

女「ちょっと待って!いきなりは!」

男「あははは」

女「もぅ。そのいきなり撮るのやめてよね」

男「ごめんごめん。でもさ」

女「でも?」

男「好きなんだ」

女「えっ?」

男「飾ってない自然のままを撮るって事がさ。勿論、向けられた笑顔も素敵だと思うけどさ」

女「あぁ、写真の話ね...」

男「そうだよ?最初から写真の話しかしていないよ?」

女「はいはいそーでした。(男)ってばカメラにしか興味ないですもんね」

男「何怒ってるんだよ?」

女「怒っていません!」

男「ならいいけどさ。あ、そうだまた写真現像したら渡すからね」

女「いつもありがとう。でもデータだけでもいいのよ?」

男「データもいいけど、写真なんだからさ、形にしてこそ完成なの」

女「ふーん。そういうものかしらね」

男「そういうものだよ。いいかいカメラって言うのはありのままを映して」

男女「その一瞬を永遠に切り取るもの」

女「でしょ」

男「よくわかってるじゃないか(笑)」

女「(男)ともう大学入ってから3年もずっと一緒にいるのよ。おかげで耳にタコよ」

男「そこまでわかっているならあきらめて写真を撮られろ(笑)」

女「とっくに諦めはついてますってーの」

男女「あははははは」

女「ねぇ(男)」

男「なに?」

女「カメラ、貸してよ」

男「嫌だよ(笑)」

女「なんで貸してくれないのよ」

男「俺は撮る側だから撮られたくないの。第一...」

女「第一何よ」

男「(女)に貸したらカメラ壊されそうだ」

女「そこまでガサツじゃないわよ!こうなったらスマホで撮ってやる!」

男「ざーんねん」

女「また顔隠して!」

男「あははは。今日は何食べに行く?」

女「もぅ。今日はパスタ。パスタが食べたい。勿論(男)の奢りでね」

男「何で俺の奢りなんだよ」

女「撮影料よ(笑)」

男「わかったよ(笑)」

男M いつしか君を撮るのが当たり前になっていた。

女M 今日もいつものように撮影をしていた。

男「あれ?なんか雰囲気変わった?」

女「そう?いつもと変わらないわよ?」

女M 嘘だった...

男「なんていうか...大人っぽいというか若干艶っぽい?」

男M それはまるで誰かに恋しているような顔だった

女「もしかして、ようやく私の魅力に気づき始めたとか(笑)」

男「ばーか。何言ってるんだよ」

男M フィルターを通して俺は君を見つめてきた。怒ってる君や泣いている君。君の笑顔は眩しかった。まっすぐに見ることができないほどに。

男「な、なぁ」

女「ん?何?」

男M この関係がもうすぐ終わってしまうなら最後くらいとびっきりの彼女を映したい。そう思った

男「何かあったら相談とかのるからな」

女「どうしたの急に?」

男「い、いや。(女)が好きな男が俺の知り合いとかなら協力するからさ...」

女「ば、ばか!本当何言ってるの?」

男「ほら飛び切りの笑顔作ってみよろ。それ撮ってやるからさ」

女「...わかった。ちゃんと撮ってよね」

男「俺がちゃんと撮らなかった事あるか?」

女「いいから、きちんと見て撮ってね!」

男「わかったよ...。それじゃあ撮るぞー。はいポー...」

男M その瞬間彼女の口が動いた

女「好き」

男「なっ...」

女「ちゃんと...撮れた?...」

男「お、おう...」

女「...」

男「そ、そうだ。(女)、俺を撮っていいぞ」

女「え?いいの?いつもダメだって言ってたのに」

男「今日だけだ。ほら。しっかり持ってくれよ」

女「わかった。ここを押せばいいのよね?」

男「そうそう。何も気にせず自分のタイミングで押せばいいよ」

女「わかった...それじゃあ撮るよー。はいポーズ」

男「俺も」

女「え?」

男「俺も(女)が好きだ!」

女「本当?」

男「本当だ。って今撮った?」

女「...撮った」

男「消して」

女「やだ。(男)の照れてる顔、新鮮だしほんの一瞬だけだったけどきちんと撮れた」

男「カメラ返して」

女「やだ」

男「もう...わかったよ」

女「写真にして私に頂戴ね」

男「何が哀しくて自分の恥ずかしい顔写真にしなきゃいけないんだよ」

女「カメラって言うのはありのままを映してその一瞬を永遠に切り取るものでしょ」

男「今それを言うなよ」

女「あはははは。(男)がいつも言ってる事ですよー」

男「なぁ(女)」

女「なに?(男)」

男「今度は二人で撮らないか?」

女「もちろん!」

END

無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう