千輪菊

作 かにみそ大将軍


男「おーい、起きて」

女「う…ん…」

男「もうすぐ花火大会が始まるよ?」

女「う…ん…。私…確か…」

男「うん。お昼寝しちゃったみたいだね(笑)」

女「そっか。お昼寝しちゃったのか…」

男「ほらほら、もうすぐ花火大会が始まるから準備しよう?」

女「今年はあんまり見る気しないけど毎年見ていたし…」

男「そんな事言わないで、さぁ準備準備!」

女 私は、彼と毎年見ていた花火大会の準備をする。

  このマンションの窓からは、河川敷で行われる花火を眺めることができる。

  いつも、出店にあるようなメニューを作って彼と食べながら見ていた。

男「今年は何にするのかな?焼きそばは外せないでしょ?あとは唐揚げ食べたい!」

女 私は彼が好きなメニューを作り始めた。焼きそば・たこ焼き・そして…唐揚げ

男「やった!唐揚げだ!(女)の作る唐揚げが一番おいしい!」

女 なんて…よく言ってたっけ...いつもは二人分だったけど今年から一人分でいい...

女「沢山作っても残しちゃうからね...」

男「…」

女「はい、出来上がり」

女 私はベランダに料理を並べていく。

女「あっ…始まったみたい…」

女 気が付くと花火が打ち上げられていた。次々に形を変えていく夜空の花たち

男「花火って、花みたいでそれが火でできてるから花火っていうのか?」

女「何それ(笑)でもきっとそうだと思うよ」

男「じゃあ…夜空の花壇に火の花が咲くってとこかな」

女「何それ?(笑)全然かっこよくない(笑)」

二人「あははははは」

女 あの頃が懐かしい…

女「また…貴方と話がしたい…」

男「その願い叶うよ」

女「っ⁉(男)!どうして⁉」

男「今日だけ特別みたい(笑)神様がくれた最後の時間なんだ」

女「なんでもいい!私…貴方がいないと⁉」

男「時間がないんだ。ごめんね。君と一緒に過ごせて楽しかった」

女「私も…」

男「次に打ち上げられる花火を君に捧げる。そしてその花言葉を受け取って欲しい」

女「だめ…逝かないで!」

男「さようなら…幸せになってね…」

女 夜空の花壇に赤い菊が咲き乱れる

男 その花火の名前は千輪菊

男女 そして赤い菊の花言葉は

男女 あなたを愛している


END

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