君とチョコレート

作 かにみそ大将軍


 

「‥‥なかなか出ないな」

口の中に残る甘さをもう一度確かめながら繋がらない君を想う。

「あっ。やっと出た。何ですぐ出ないんだよ(笑)」

たっぷり5コール待たされてから繋がった君は、ごにょごにょと何か言っている。

「恥ずかしかったって?そりゃあ突然の事で吃驚したけど…でも嬉しかったよ」

今日はバレンタイン。君から貰ったチョコレートの空き箱を見つめる。

「チョコレートすごく美味しかった。ありがとう。あれって手作りなんだろ?」

電話の向こうの君から安堵の息が漏れる。あんな凄い物作れるのに失敗などあるのだろうか?

「お店の商品みたいだったよ。手作りって聞いていたけどちょっと疑っちゃったよ(笑)」

大げさに泣いたふりをする君はとても可愛かった。この時間がもっと続けばいいと思った。

「ごめんって(笑)。あのチョコレートはどうやって作ったの?材料は?」

君との会話を続けていたくて色々聞いてみる。

「そうなんだ。お菓子作りって結構大変なんだね…」

材料や作る工程を聞いて初めて大変さを知った。

「すごく嬉しい。ありがとう」

なんだがとても照れ臭かった。でもこれから言う事はもっと照れ臭い。

「その…告白の答えなんだけど…」

そう、君は告白と同時にチョコレートを渡してきてくれた。そして走り去ってしまった。

「僕も…君が好きだ。だから付き合って欲しい」

電話越しでも君が息を呑むのが伝わる。

「これから楽しい想い出を一緒に作っていこうね」


END

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