心の内に秘めたもの
作者:みんみん
「」男性 『』女性
(ノック音)
「お嬢様、失礼致します。私へ何か話があると伺ったのですが…いかがなさいましたか?」
『えぇ、ちょっとね。』
「…お嬢様?」
『○○、私ね…遂に嫁ぎ先が決まったの。』
「っ!…左様でございますか。」
『えぇ。明日にはこの屋敷を出ることになったから最後に○○に挨拶くらいしておこうと思ってね。』
「え、明日!?いや、それはいくらなんでも急すぎるのではないのでしょうか…?」
『急遽決まったことのようだから。』
「左様でございますか…」
『…』
「…」
『この年になってやっと嫁ぎ先が決まったわ。』
「…」
『ねぇ、聞いて?しかもお相手はあのローレンス公爵!これでこの屋敷も安泰ね。』
「…」
『っ…お父様もお母様も凄く喜んでくれたのよ?私、やっとこの屋敷の役に立てたのよ?
なのに…どうしてあなたは喜んでくれないの?』
「…お嬢様。」
(抱きしめる)
『ちょっと、離れて!こんなとこ誰かに見られたら…!』
「大丈夫でございます。こんな時間です、誰も見ておりませんよ。ですから…泣きたい時は思い切り泣いていいんです。私の前ではありのままの貴方様でいてください。」
『っ…嫌…。本当は、本当は婚約なんて嫌に決まってるじゃない!どうして知らない人と結婚しなきゃいけないの!?どうしてこの屋敷の為に私の人生を捧げないといけないの!?私は…私は屋敷を守る為のモノじゃないの!…なんで私は自由に生きてはいけないの?』
「お嬢様…」
『…き。』
「え…?」
『好き。私、ずっと前からあなたのことが好きなの…。ねぇ、○○。好きな人と幸せな人生を歩みたいと願うのはダメなことなの?』
「ダメではないです…ですが、お嬢様…」
『執事に恋愛感情を持ってはいけないなんて法律があるの?お嬢様にだって自由に恋愛をする権利はあるはずなのに…どうして…』
「…お嬢様……私は…!」
『(笑う)』
「え…?」
『なーんてね!びっくりした?あなたに冗談を言える最後の機会だったから言ってみただけなの。どう?私の演技力なかなかのものでしょう?』
「え、いや…え?」
『ふふ、大成功ね!大体考えてみなさいよ。私が1使用人のことを好きになるわけないじゃない。』
「っ…」
『さ!明日も早いから私はもう寝るわ。あなたも下がっていいわよ。』
「っ…本当に冗談だったのでしょうか?」
『…そうよ?ほら、早く下がなりなさい。』
「たとえ…たとえそれが冗談だったとしても、私はお嬢様のことが…!」
『○○』
「!!」
『それ以上は言わないで。…あなたの口からその言葉を聞いてしまえば、私の意志が揺らいでしまうわ。』
「…」
『婚約を決めたのは私。この屋敷を守る為ならなんだってするわ。...分かってくれるわよね、○○?』
「…はい。お嬢様の決定に口を挟んでしまい大変申し訳ございませんでした…私はこれにて失礼致します。おやすみなさいませ…△△お嬢様。」
『えぇ…おやすみなさい。』
【男性side】
''使用人を好きにならない''…か。
相変わらず嘘が下手くそだなお嬢様は。
"俺のことが好きで好きでたまらない"って顔でそんなこと言われても…納得なんか出来ません…。
【女性side】
…これでよかったの。
私は正しい選択をしたのよ、△△。
〇〇なんてただの使用人。好きになんてなるわけ…
…嘘。ずっと好きだった。幼い頃からずっと…
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『○○…』
「△△…」
『「愛してる…」』