約5分 

作:SASHIMI

カーテンの隙間を通って薄明るい光が差し込む

窓を開けるとまだ肌寒い風が吹き込んでAM4:17

冷え切ったサンダルに足を通してベランダに立った

今日は昨日より天気がいいのかな、なんて

まぁ、別に外に出るわけじゃないけど

タバコを一本取りだして火をつける

一口目、口に入れた煙をふかして吐き出すと

二口目は肺の奥まで煙を流し込んだ

ふと思い出す、タバコの煙を嫌がる君の顔

隣に来るくせに、煙を凄い嫌がって顔をしかめた

「...匂いが嫌なら来なければいいのに」

そういうと、君は首を横にぶんぶんと振った

君に縋り(すがり)つくように恋をしていたあの頃は

もう何年前になってしまっただろう

僕の人生でたった一人の 「忘れられない人」 だ

君は今、なにをしてるだろう、何を想っているのだろう

幸せに暮らしているのかな

なんて

友達に話した 「忘れられない人」 の話

「忘れられないとか今の彼女に失礼だろ」

って言われてしまった過去を思い出す

無理に忘れたい、とは思わないけど

脳裏に焼き付いて、記憶から出て行ってくれなくて

それこそ

忘れようと思ってる間は忘れられないし

「忘れられない人 = 好きな人」 って訳じゃない

それに君に注いだ愛と貰った愛があったから

いまの彼女をこんなに愛せてる自分がいて

君の時に出来なかったことをしてあげたい

そう思える人にも出会えた

そんなことを考えている間に

煙草の火種は消えて吸殻になっていた

吸殻を灰皿に捨て

新しいタバコに手を伸ばすと

ベッドから彼女が起き上がった

AM4:30

目の覚め切っていない君は

上半身だけ起こして

頭は下を向けたまま眠そうにしている

タバコに伸ばしていた手を引っ込めて

部屋に入り話しかける

「ごめん、窓開けっ放しだった、寒かった?」

君は下を向いたまま首を横に振った

「そか、起きちゃった?」

今度は、首を傾げながら僕の顔を見て腕を広げた

チラッと目を見て逸(そ)らしては唸る

僕はそれに応えるように

君を強く抱きしめた

僕の腕の中で苦しそうにしていた君は

埋もれていた顔を出し

携帯画面を僕に見せる

「この結婚式場いいね」

君があんまりにも眠そうに笑うから

携帯を取り上げベッドへ押し倒した

「また起きたら結婚式場、探そっか」

あの時の君がいたから考えることができた

あの時の君がいたから知れた愛があった

残りの人生、僕は今大切な彼女の為に生きようと思う

目蓋の裏で君の顔を思い出す

お互い幸せになろうね 

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