眠れない夜のひとり言

約 分
作 藍沢ひなた
時計の針は、すでに今日を追い越している。
部屋の隅々まで夜が満ちていて、世界でただ、私ひとりだけが、
ポツンと取り残されたような気分になる。
「早く寝なきゃ」
そう思えば思うほど、頭の中が変に冴えてしまって、
過去の失敗や、未来の不安ばかりが映写機みたいに再生されていく。
でも、ふと思う。
こんなにも眠れないのは、きっと、私が弱いからじゃない。
今日という一日を、真面目に生きようとしすぎた反動だ。
心をすり減らして、誰かの言葉を受け止めて、
「ちゃんとしよう」
と気を張り続けていたエンジンが、急には止まれないだけのこと。
だから
今夜はもう、潔く降参することにした。
眠ろうとする努力を、手放す。
この暗闇は、私を責めているんじゃない。
眩しすぎる光や、他人の視線から、私を隠してくれているだけだ。
ここは誰にも邪魔されない、私だけの避難所。
奥歯の力を抜いて、肩の荷を下ろして、
泥のように深く、深く布団に沈み込む。
眠れなくてもいい。
ただ横になって、この静けさに身を任せているだけで、
私の体は十分に癒やされているはずだから。
焦ることはない。
朝が来るまで、この夜の底を、漂っていればいい。
それで十分だ。
END

