裏舞台

朗読企画「W」提供作品

対になる台本:きぃの台本置き場(作:きぃ)


約     分
作 かにみそ大将軍
 

「よし...もしもし、演劇部から頼まれたステージ用の台本なんだけど、そろそろ作らなきゃいけないと思うんだ。それで明日の放課後打ち合わせしたいんだけど...ありがとう。うん、じゃあ明日。おやすみ」

「よし!結構スマートに誘えたんじゃないかな!前の部長から引き継いだ時は面倒としか思えなかったけど、あいつが副部長だし、これで距離を縮められるかも。一先ず、どんな演目にするか考えるか。えっと...高校の文化祭だから、わかりやすい方がいいよな。やっぱ男女の恋愛がベターかな...始まりは...女から『ごめんね、待った?』かな...そして男が『今来た所だよ』っと...平凡過ぎるな...でも一度は言ってみたいよな。遅刻してきた女性に対して優しくこう『今来た所だよ』みたいな。でも待てよ。『待った』って聞かれるって事は多少なりとも遅刻してきている訳で、それに対して『今来た所』というのは、男性側も遅刻している?なら『待つのもデートの内だよ』とかの方がいいのか?もし明日彼女が遅れて来たらすっと言えるようにしておこう。いや...待てよ明日は打ち合わせでデートじゃないよな。『待つのも打ち合わせの内だよ』っていうのも可笑しいな。うちうち言ってるし。となるとやっぱり『今来た所だよ』っていうのがいいのか?あーわかんね。俺は文芸部部長もっとかっこいい台詞を...いやいや、そんなことより台本考えなきゃ。親近感が湧くように舞台は高校で、放課後...もしかして明日の打ち合わせ内容を台本にしてみたらどうだろう。いやいやでも運動部と違って、大会もなければ、動きもないから舞台映えはしないよな。...放課後、見つめ合う二人。不意に視線が絡まり、ふと『好きです』とか言われたら『俺も好きだ』...恥っず...台本云々じゃなくて妄想垂れ流しちまった。でも好きなんだよな。つーかよく考えたら明日二人きりじゃん。あー。今から緊張してきた。

真面目に考えてないって思われたら幻滅されるかな。よし、今日は一生懸命内容考えるぞ」


(次の日の放課後)

「ふわぁ...眠い」

結局今日のことが気になって内容は考えられず、妄想も相まって眠れなかった。

「つーか遅いな。ホームルームはとっくに終わってると思うんだけど」

今か今かと心臓が早くなるのがわかる。なるほど、これが『待つのもデートの内』ってやつかもと思った時、廊下を走る音が聞こえてきた。

「やっべ。緊張してきた。あーどうしよう」

勢いよく扉が開き、彼女が申し訳なさそうに放った台詞。俺は優しく微笑みかけて

「今来た所だよ」

決まった。俺は心の中でガッツポーズをした。

END

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