雪涙

作者:かにみそ大将軍
男 雪が世界を白く染めていく
女 涙が世界の境界線を歪にしていく
男 好きにならなければ...
女 あの日、出会わなければ...
男女「雪涙」
男 出会いは些細な奇跡だった
女 まるでドラマのワンシーン
男 偶然同じ書店に入り
女 偶然同じ本を手に取った
男「どうぞ」
女「ありがとうございます」
女 君の優しさに触れた瞬間だった
男 その後3店舗も探したけどね
女 その日から私の世界には
男 僕の心に
男女「君が棲みついていた」
男 また君の笑顔に会いたくて
女 君の優しさに触れたくて
男 あの書店を何度も訪れた
女 もうダメかと諦めた瞬間
男 君が現れた
女「あの...少しお話しませんか?」
男「勿論!それじゃあ前の公園にでも」
男 夢みたいだった
女 無我夢中で君と話した
男 好きな本 好きな食べ物
女 嫌いなもの 苦手な事
男 君がどんどん僕の中に入ってくる
女 君の優しさに触れて
男 君の笑顔に癒され
男女 一緒の時を過ごすようになった
男「好き」
女「大好き」
男「僕の方がもっと好き」
女 こんな時間がずっと続くと思っていた
男 信じていたけど...
女 いつしかすれ違うようになった
男 気にならなかった事が気になるようになった
女 許せていた事が...許せなくなった
男 些細な出来事が積み重なり
女 耐えることのできなくなった二人の糸が
男女 切れた
男「僕達別れよう」
女 何ヶ月も前からわかっていた
男 あの頃にはもう戻れない
女「さようなら」
女 君に別れを告げて一人歩く
男 部屋の荷物を片付けてふと窓を見る
男女「雪だ...」
男 雪が世界を白く染めていく
女 涙が世界の境界線を歪にしていく
男 好きにならなければ...
女 あの日、出会わなければ...
男女「違う!!」
男 確かにあの時君を好きになった
女 その気持ちは嘘じゃない
男 重ねた時間も
女 歩いた道も
男女「君を好きだったから」
男 いなくなって気づく部屋の広さ
女 離れてわかる一人で歩く切なさ
男 でも
女 もう
男女 戻れない
男 君が居ない部屋で一人...
女 君と話したあの公園で...
男女「ごめんね...大好きだよ...」
男 白く染められたこの世界で
女 私の涙が溶かす事ができたなら
男 また、あの日の君に会いたい
女 もう一度、やり直したい
男 叶わない願いが雪となり
女 届かない想いが涙となって零れた
END